【11】 イシマツ「味噌なんてどこで手に入れたんです」 ウメ「こっちではなかなか手に入らないから、大豆を育てて、一年かけて味噌から作ったの。初めて作った割にはなかなかいい味だと思う。自分で言うのもなんだけど。これが本当の手前味噌。フフフ」
【12】 アリナ「これ、何なんですか。クソマズいんですけど」 ウメ「日本人が毎日必ずと言っていい程飲む、スープよ」 アリナ「私、初めて見た時、奥様が樽の中でウンコを作ってんだと思って。衝撃を受けた覚えがあります。ニオイからしてダメですね」 イシマツ「奥さんを何だと思ってんだ君は」
【13】 イシマツ「それは。箸にしみこませて、吸っているのか」 アリナ「全然減っていかない。最終的に『木』を味わう形になってます」
【14】 ヨシオ「決して居心地のいい職務ではなかったな。結局、島の者から慕われる事もなかった気がする」 イシマツ「立場的に仕方ないですよ。見張りなんですから」 ウメ「私達、一度も、そんな事思ってなかったんですよ」 イシマツ「しかし『指名』はどうなります?今日中には発表して頂かないと」 ヨシオ「それが唯一の気がかりでね。どうにも気が定まらない」
【15】 イシマツ「事情もろくに知らない者に、選ばせるってのは」 ヨシオ「事情を知らないからこそ、何の後ろめたさも感じずにできるはず」 イシマツ「それじゃあまるで騙すみたいですね。気の毒に」 ヨシオ「私だって、毎年毎年、心苦しい。着任して以来、何人を」
【16】 イシマツ「しかし、船でやってくるなら、もう着いてもいい頃合いでしょう」 ウメ「そういえば。定期船すら今日はまだやってきてないみたいね」 イシマツ「ここ数日は波も高いようだし。出航を見合わせたのかもしれません。……あるいは、無理に出航して難破した。とか」
【17】 ミキ「口の周り。脂まみれです。拭いてください」 ベニヘカ「食い慣れないもの食ったからな。いつも魚ばかりじゃ飽きる」 ミキ「毎日、カイに頂いてるのよ。彼の好意に甘えている」 ベニヘカ「物乞いみたいな真似を。誇りはないのか」
【18】 ベニヘカ「俺はお前に出て行けと言うつもりはないぞ。お前は俺と一生を添い遂げるんだ。部族の長と神官の家の娘は、代々そう誓ってきた」 ミキ「古い盟約にいつまで縛られなければならないのかしら。この島にアナタの物なんか、あとはこのあばら家しかないんです。 ベニヘカ「すべてはアイツらのせいだ。この島を踏みにじりやがって」
【19】 マウナ「数字の意味は別として、少し心当たりがあるんです。形は違いますが。看守が小袋に入ったものを、そうやって首からかけているのを見た事があります。彼はそれを『おまもり』と呼んでいました。いわゆる魔除けの事です」
【20】 ハウリア「魔除けか。それはいい。しかも2枚ある。これは心強いぞ」 ベニヘカ「1つよこせ。2枚もあるんだ。1つぐらいいいだろう」 ハウリア「ダメだ」
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撮影者:佐藤淳一 ※この画像の著作権は団体並びに撮影者に帰属します。