【21】 伊緒「父親が50過ぎてホストって。嫌なんだけど。恥ずかしい」 公彦「そんな、酷い言い方をしなくても」 伊緒「ごめんなさい。泣かないで。言いすぎた。お父さん」 公彦「そう呼ばれる資格はない。俺はただの、ルナブリンガー猛」 伊緒「お店での名前ね。クソダサいね。仕事、遅れるわよ」
【22】 屋久「お父さん、廊下ですれ違いましたよ。これからお仕事なんですか?」 伊緒「駅前のコンビニで」 屋久「大変だ。それにしては気合の入った恰好でしたけどね」 伊緒「ああいう制服みたいです」
【23】 伊緒「これが盗聴器だなんて思ってなかったし」 三浦「ええ。これは通話機能もあるスピーカー、『サンサール』です。ですが、何らかの影響で、電波を拾ってしまっている様なんですよ」 伊緒「つまり、私が話しかけた事に、答えた声っていうのは」 三浦「盗聴器が受信した音声を、ランダムに発しているだけだと思います」
【24】 屋久「奥さんは警察に助けを求めた。そして今、奥さんの姿はない」 伊緒「彼の言う通り、出かけているだけは?」 ―屋久、三浦にアンテナを向ける。 屋久「ああ、嘘ついてるな」 伊緒「それ、そういう事もわかるんですか」
【25】 三浦「それでも私は歩みを止めなかった。手を伸ばし、そのまま彼女の」 屋久「アンタ。心が壊れてる」 三浦「肩に手を掛けた。10数えるうちにできるだけ遠くへ逃げたんです」 屋久「何の話ですか」 三浦「夕食後のレクリエーション、だるまさんがころんだです」 屋久「真面目に聞いて損した!」
【26】 屋久「奥さん、何ともなかったんだな」 伊緒「今のってリアルタイムの声だったんですか?そもそも、一方的に盗聴してるだけなのに、会話が成り立つのはおかしくないですか?」 屋久「言われてみれば。こっちの声は届くわけないか。じゃあ、今のは?」
【27】 伊緒「お疲れですね。声に元気がないようですけど」 屋久「いや、何だかドッと疲れがでました。今日は昼間に、家内の一周忌の法要だったもので。一日中、ばたついていて」 三浦「そんな日ぐらい、仕事、休んだらいいのに」 屋久「アンタが呼び出したんじゃないか。人騒がせな」
【28】 伊緒「近寄らないで!誰か助けて!お父さん!」 ―伊緒、戻ってきて、猿の置物に呼びかける。 伊緒「110番!もしもし、警察ですか?助けてください。…何だ。…聞こえてきたのは、全部私の言った事だ」
【29】 神宮「俺と別れたがっている理由は」 未世「男よ」 神宮「やっぱり。わかってたよ。確かに、ここ半年くらい、出張が続いて家を留守にする事が多かった。その間、君はここで何をしてた」 未世「月明かりに照らされてた」 神宮「一体、何やってんの」
【30】 神宮「わかってるんだよ。君がよく話題にだす、上司の。何て言った?」 未世「…やっぱり、池だ」 神宮「やっぱり池田?そんな名前だっけ?」
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撮影者:佐藤淳一 ※この画像の著作権は団体並びに撮影者に帰属します。