机の上ではこちらが有利 of シアターグリーン3劇場連動企画

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西側に暮らすマイは、壁によって引き裂かれてしまった家族を案じて、今日も町の外にいた。そんなマイをハッシと監視兵のレイジは気にかけている。ハッシの心配は別にもあり、最近、東側の井戸から採取できるウルが尽きかけいることであった。
新任の監視兵ビスコは、どんなにレイジの説明を受けようとも、住民達が迷信の様に信じている「プラザ」という区画に懐疑的であった。それ以前に、国境でありながら相手国の兵士の姿を見かけないことにも違和感を感じていた。
そこへ先の戦争に徴発され、戦死したと思われたダムスが帰還する。だが彼の妻ユカリは既にムゴルと再婚をして新しい人生を歩んでいた。時を同じくして西側の土地に行き倒れと思われる男がやってくる。男は記憶を失っていたが、プラザを横切り、町の東側へ侵入してきた。兵士たちが拒もうとするも男は東側へ辿りつき、そこで気を失う。
ダムスの帰還を聞いて、元妻のユカリと今の夫ムゴルが町からやってくる。怒りを露わにしたダムスは強引にプラザを横切ろうとすると、上空から光が差し込む。ダムスに触れた兵士たちは気を失い、またそのダムスもムゴルに触れた瞬間、力を失った。ムゴルとユカリは「プラザ」の恐ろしさを目の当たりにし、ダムスを置いて逃げるように町に戻った。



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騒動の報告を受けた駐屯兵団副長のセナイとその部下コバルは、プラザの中で力なく座りこむダムスに聴取を始める。彼らは住民には兵士だと思われているが、実際はALを管理する組織の一員であり、数か月前、何者かによって殺害された前任者について調査をするためにビスキアに赴任してきたのだった。丁度そこへ、西側に暮らすバクー、フミコ、スズ、マイがウルを燃やす為にやってくる。聞くところによると靄が晴れかけ、町の中にまで光が差し込むようになったという。ビスキアの住人はこの光を浴びる事によって、自分の意思を無視した身体の衝動が表にでて、無意識な行動をとリ始める。セナイ達はそれを当然知っていたが、住人達は身体がおかしくなったと思い込んでいる。またそう思い込んでいてもらわなければ、彼らとしても困るのであった。ALが自我を取り戻さないよう、再び人間に牙を剥く事がないようにするのが彼らの任務なのである。
シム・ナトリは役場の地下室に囚われていたALについて調べていたところ、当該のALに逃げられたと報告する。自我を持ったALが町に潜伏した事を知り、セナイは愕然とする。事情を知らない行政官ノーベンが追跡してくる。シムとナトリを敵国USQの脱走捕虜だと決めつけ、捕えるよう命じる。ALの存在に気づかれたなくない為、ノーベンに従うセナイ。居場所を奪われたシムとナトリは、プラザを横切りやむを得ず西側へ亡命する。



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東側に運び込まれた男を介抱したのはハッシとニコルの夫婦であった。しかし彼らが少し外出していた隙に、男は家を出て姿を消してしまった。彼らは血眼になって男の行方を探す。何故なら男は自らをALと名乗った。人間が忌避するALを匿ったとなれば自分たちの身も危ない。だが、ニコルにはアインと名乗るその男が理由もなく「悪」であると決めつけられている事が、理解できないでいた。町の中を探しても見当たらず、こうしてプラザまでやってきた。
町長ランの息子タリムはプラザを通って妹のマイに会いに行く事を試みる。引き留めるハッシ達であったが彼は何故かプラザに入っても異変を起こさず、何事もなく西側へ向かっていった。町の資産家セリはその軽率な行動を責めるが、タリムは、町を昔のあるべき姿に戻したいと取り合わず、西側の町へ入っていく。有るべき姿を問いかけられて、ダムスの事が頭から離れないユカリは激しく動揺する。
また、ニコルたちの様子がおかしいと感づいたセリは彼らが行き倒れのALと関わりがあると疑いを持つ。シラを切るハッシだったが、町から行き倒れの男アインと、町の者ではない男タダキが降りてくる。彼らは自らを堂々とALと名乗り、西側のウルを盗み出そうとしていた。ALである事を非難される事をものともせず、彼らは自分たちの生き方の正当さを主張する。ニコルは自らの暮らす世界が全く違うものなのではないかとの疑問を露わにする。



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地下牢にノーベンが閉じ込められたと思い込んでいる秘書官のミドはウルを手に入れる為に奔走していた。技師のジローの言葉を受けて西側のウルを奪おうとプラザに立ち入る。それを西側のフミコが見咎め、二人はプラザの中で対峙するが、そこへ光が差し込み、二人とも体の自由を失う。またその光の影響で東側の住人も次々に発症し始める。自らの意思で西へ向かおうとするニコルと、それを止めようとするユカリ。2人もプラザに立ち入ってしまい、あわや越境する寸前であった。兵士コバルの前で繰り広げられていたにも関わらず、彼は手出しをせず傍観しているだけであった。
ノーベンは兵士副長代理のフラノと共に西側の町からやってきた。プラザの中で座り込むミドを一旦は案じるが彼女がALである事がわかるとノーベンは態度を急変させ、蔑むように彼女を見捨てた。失意のミドはジローに抱えられて東側へ戻っていく。
兵士たちの一掃を目論むタダキは、西側よりタリムとシムを連れ従え、再度東側への侵入を試みる。彼らは目的こそ違えど、兵士たちを憎んでいるという利害は一致していた。異変を察知したセナイ達は、彼らの侵入を防ぐべくプラザをバリケードで封鎖するも、ALの性質を利用し、次々と侵入を許してしまう。この期に及んでもやはり兵士達は傍観しているだけであった。レイジは自らの属するこの駐屯兵という存在に疑問を抱く。



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町の中では異変が起きていた。広場に大穴が開き、空からは有害な光が降り注ぐ。責任を感じた町長ランは、ウルを燃やす炉の修理にやってくる。バクーの手引きによって東側に戻っていたマイは東の町を棄て、住民皆で西側に移り住むことを提案する。かつての町の姿を失ってしまう事に抵抗のあるランであったが、マイは亡き父が守ろうとした者は、町ではなくそこに住む人々だと説得する。だが、兵士を追放し、壁を取り壊そうとしている活動家ゴドウがそれを許さず、ランやバクーと口論となる。ゴドウが目指したものは過去を取り戻す事、ランが目指すものは町の住民の未来の事。どちらも間違いではなかったが二つの主張が交わる事はなかった。ランは住民を避難させようと町へ戻っていく。
セナイによってALだと断定されたノーベンは生き方を見失っていた。やってきたミドへ合す顔がない彼だったが、ジローのとりなしで邂逅する。その中で、生きとし生ける者には出自や立場に関係なく、「尊厳」というものがあると思い知る。ただただ人間達にいいように生かされていたノーベンは自らの尊厳を守る為、町へ戻っていく。
ジローが衝撃を与えると、暫く稼働の止まっていたウルの炉が動きだし、急激に靄を生み出していく。それは今までに見た事のないような濃さを持つ靄であった。



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それは人間がALに仕掛けた罠であった。ALである住民たちは光を恐れるあまり靄を生み出す。しかしその靄は上空に大量にたまると、「雨」を降らす。この雨のおかげでかつてビスキアは一度滅んだ経緯があった。その旧ビスキアの生き残りがアインとタダキである。ウルと靄の真相を知った住民たちの反応は様々であった。その大半は町の外へでて、西側への避難を試みた。しかしそこにはプラザが立ちはだかる。進む事も退くこともできない状況を救ったのは、地下で酒場を営んでいたサマという一人の人間であった。彼女は人の行為を詫びて皆に逃げるように呼びかける。しかし、セリを初めとする数名の住民はそのまま残る事を選択した。ムゴルはユカリをダムスに託し、東側の町へ戻っていく。
一足先に東を抜け出してきたタリムとマイの姉妹はアインに導かれる。人間の非道をと自らの宿命を嘆くマイにアインは、それでも憎んではいけないと諭す。タリムの顔は曇ってはいなかった。自分たちがALであるという事実を突きつけられても彼は自らの存在に何一つ疑問を持っていない。彼にとっては、それで何が変わるという事もない。
雨は徐々に強くなる。降り注ぐ雨を監視小屋でやり過ごすタリムとマイ。
雨上がりのプラザには光が差し込んでいる。そこにアインの姿はなかった。



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