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奇妙な構造の監獄に3人は入っていた。上から見ると円を3等分したような部屋で、ガラス張りではあるが、収監者は自分の隣のどちらか一方の姿しか見えず、どちらか一方にしか声が届かない。扉には鍵がかかっておらず、脱獄しようと思えば今すぐにでも出られる。ただし、万が一にも誰かが逃げ出そうとするそぶりを見せたら、残った者はブザーを押し通報する、という相互監視をせざるを得ない状況である。政治犯のアラガイ(片桐俊次)は3人で一斉に脱出する事を提案する。だが、クロバネ(岩田裕耳)は、誰か一人が裏切って、ブザーを鳴らすのではないかという疑念を払拭できず、非協力的であった。思想犯のツキガタ(小原雄平)は、監獄の構造を利用して、社会では禁止されている、日課の宗教的な礼拝を行おうとしている。

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ケージシステムの開発者の一人であるユキタ(道井良樹)は、監視の危険性を告発する為、記者のトガメ(なしお成)の取材に応じていた。ユキタは重要な内部告発をしつつも、周囲の目を気にして、なかなか大声で話せず、その場も既に監視されているであろうことに苛立ちは募っていた。そこへユキタの電話に着信がある。法律により、公共の場での電話は、「決められた場所」でしかする事は許されず、ユキタによると、それはその場所で通話する事により、センターが会話を盗聴できるからだという。このセンターのやり方に不満をもつユキタは、自分が相手と電話をしながら、あたかも目の前にいるトガメと会話をしているように見えれば、「電話をしている」と、周囲に思われないのではないか。という無謀な実験に挑む事にした。

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盗聴器で互いの部屋の会話を盗み聞きし合って、不穏な発言があれば通報するよう義務付けられているハルミ(犬井のぞみ)とフウコ(武川優子)。だがある日、センターから通知がきて、『~ない』『~しない』などの否定的な言葉を使う事を突然禁止された事で、自分たちもまたセンターに盗聴されている事に気づく。部屋のケージシステムのモニターには数字が表示されていて、どちらかの部屋でその否定的な言葉が使用される度に、カウントが減っていく。そのカウントが0になった時、自分たちがどうなるかは、ある日突然失踪したとある家族の噂が物語っている。それぞれの部屋にはハルミの職場仲間のツキガタと、フウコの近所の主婦ミツメ(渡辺美弥子)が何も事情を知らずに奔放に発言をし、2人を悩ませる。

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個人の私生活はセンターに筒抜けになっており、誰がいつ、どこで何をしたかは容易に判別できるようになっていた。それは社会から犯罪を無くす事を目的とし、社会治安の維持に役立っている。この日、ある殺人事件の被疑者の行動を明らかにする為、治安局員クロバネの元に、3人の市民が集められた。被疑者の男のSNSや購入履歴や、街中の監視カメラの情報を基に、男の犯行を立証るのだが、システムの不具合により、時間の情報は失われている。数ある情報を正しい時系列にする事で事件の真相が浮かび上がってくる為、3人は激しい議論を交わす。だが、それぞれの主張は思い込みや断定の域を出ず、恣意的な思考で犯罪者を生み出そうとするこのやり方にタムカイ(新野アコヤ)は反発し、監視社会の危険性を主張する。

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センターは監視業務の殆どを、義務として市民に担わせ、市民同士が牽制し合う事で、批判が政府に向く事を避けようとしていた。こうした背景もあり、一市民であるハルミも、かかってきた電話を本来の相手に伝言で繋ぐという、電話の取次ぎ業務をする事になる。内容は結局の所、盗聴ではあったが、センターの業務である以上、ハルミは意気込んでいた。しかしお節介で心配性の母・ミツメが介入してきた事から、別の相手に伝言してしまうなど混乱しはじめる。そんな中、ハルミは会話の内容である「身代金」という言葉に引っかかりを覚える。アラガイ達によって息子を誘拐されたユキタは、電話で指示するタムカイによって指定された場所へ来ていた。まさにこれから重要な指示が。という時に、ハルミ達の混乱はピークを迎える。

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政治活動家のアラガイとタムカイは、センターの監視下に置かれていた。彼らの部屋では、数分おきに、ケージを通じてセンターからの問いかけに応答しなければならない。この義務がある以上、簡単に外出する事ができなかった。そこで、市民の義務の一環として監視業務をしているトガメの私生活の弱みを利用して、監視を抜け出そうと画策したのである。彼らは部屋の中で会話をしている映像をあらかじめ用意し、それを時間がきたら監視者たちに見せる事で、外に出る隙を作りだそうとしていた。事情を知ってしまったトガメは、半ば脅迫される形でこの計画に付き合わざるを得なくなった。同僚のクロバネが目を光らせる中、録画を相手に、リアルタイムで会話をしているように見せかけるという、奇妙で緊張感が漂う状況が始まる。

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ユキタ夫妻とミツメ母娘は、互いに監視と盗聴をしあっていて、何か落ち度があればすぐさま当局に密告する機会を伺っていた。だが実際の所は、ユキタの妻のフウコの不貞行為が暴かれると言った、家庭の恥が垂れ流れるだけの迷惑なシステムであった。この日、ミツメの部屋にはツキガタが訪れる。娘のハルミの恋人として歓迎していたミツメであったが、ツキガタは徐に禁止された宗教的な礼拝を始めるのであった。システムを通じてその異様さに気付いたフウコに対し、取り繕うミツメであったが、その頃、フウコの部屋にもセンターへの爆破テロを試みて失敗したアラガイが逃げ込んできていた。事情を知らないユキタは、アラガイをフウコの浮気相手だと勘違いをする。こうして互いの監視下で、意図しない奇跡的な会話が始まった。

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監獄の3人は収監時に首の後ろにつけられた白か黒の印の色を答えられれば釈放される。だが、自分の色は見る事が出来ず、構造上、他人の色はどちらか一人の色しか見る事が出来ない。推理に生きづまった3人は、監獄の意義について考える。センターが目指しているのは市民が収監者であると同時に看守である事をもとめられる社会。そんな横暴な組織を生み出したのも、また市民なのであると思い至る。痺れをきらしたクロバネは一つの賭けにでる。アラガイに自分の色を教え、その反応を見ようという。だが、アラガイが一人で逃げ出すのを恐れたツキガタは、嘘の色を伝えてしまう。混乱したアラガイの反応を見てクロバネは一つの答えを導き出す。それは聞いたツキガタはスイッチを押した。すると―

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背景設定

センター

元は「大きな中央」とよばれていた政治組織で、現国家唯一の政党。社会主義国家における指導政党にあたるものである。その役割として市民の統制・管理をし、立法府や行政府の上に存在して、国家全体を指導する組織。内部には警察組織を移管した「治安局」や市民の監視を行う「観察局」などの部局が存在する。市民にとって国家や政府を意味するものは、全て「センター」と称される。

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ケージシステム

『市民は、手厚く保護し、注意深く観察し、丹念に飼育しなければならない』というスローガンのもとに、センターが推進しつつある、市民相互監視システム。システムの形態はさまざまで、主に監視カメラを用いた盗撮や、電話の盗聴、通信の傍受などあり、日常的に行われている。それらすべてを総合して市民からは【ケージ】と呼ばれている。この監視や通信傍受を行うのは、センターの職員ではなく、ごく普通の一般人の中から無作為に選ばれ、決められた期間監視業務に従事する。市民は自らが監視される立場でありながら、他人を監視する義務を負う。

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市民の生活

市民はセンターが指定した、「区画」と呼ばれる集合住宅風の部屋に暮らす。この国家においてセンター以外の政党及び政治活動は禁止されている。市民生活や娯楽に関しては殆どが容認されているが、かつてカルト教団によるテロが相次いだ事から、宗教への傾倒は禁止されている。

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