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冒険小説が好きだった。

スウィフトやヴェルヌが連れて行ってくれた場所は、
それが例え架空なものであっても魅力的であったし、
この狭い島国に居ながらにして、広くて多様な世界を想像する事ができた。
中でも好きだったのは、孤島でも絶望する事なく生き抜いたロビンソンという男の漂流譚で、
その姿に憧れて、何度も借りて読んだものだ。

いつか飛行機乗りになって、大海原に浮かぶ未知の島や国を巡ってみたい。
その夢を叶える為、彼はパイロットを目指した。

操縦技術を会得するのは決して簡単な事ではなかったが、その話は別の機会に譲るとする。

数年後、必ずしも望んだ形ではなかったが、
彼の操縦するプロペラ機は、夜明け前のまだ暗い海へと飛び立って行くことになる。
そこからの事はよく覚えていない。

彼は、ベッドの上で目を覚ました。
自分がどうしてここにいるのか、そもそもここがどこなのか、思い出せずにいた。
それでも窓の外に広がる景色には何となく馴染みがあった。

作者や題名は忘れてしまったが、そうだ、昔読んだ冒険小説に出てきた、一風景に酷似している。
南緯34度、西経83度に浮かぶ架空の島。

そこは、国中の死刑囚たちが集められ、共同生活を送りながら、
死して罪を償うその日をただ待つだけの監獄の島。

物語の中で、絶対的な権力を持った支配者が君臨する島だったはず。
その支配者の名も確か、そこまで思いを馳せた所で、女の声が現実に引き戻す。

「ここはロビンソンという男が支配する島。」

これが彼と、島の住民との初めての接触であった。



これはとある飛行機乗りの滑稽でやがて悲しい漂流譚。

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