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マグナ諸島について

マグナ諸島は、南大西洋に浮かぶイギリス領である。有人のアルスマグナ島と、無人のメリデマグナ島からなる。アルスマグナには約300人の定住人口がある。世界有数の孤島のひとつである。元々はマグナ島という一つの島であったが、17世紀に島の南西部にそびえていたジョクラトルピークの噴火により、南部のメリデマグナが分離した。海洋性気候で、昼夜・夏冬の温度変化は大きくはない。
元首はイギリス女王であり、女王は総督を派遣する。アルスマグナの総督はセントヘレナ総督の兼任であるが、総督はセントヘレナに常駐するため、外務英連邦省職員である管理官が総督の代理として駐在する。管理官は島の評議会の議長を務め、評議会の助言を受けて行政をつかさどる。評議会は12人の評議員からなり、評議員のうち少なくとも1名は女性であることが定められている。

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アルスマグナは、島独自の状況に応じて独自の立法を行うが、島の法律と矛盾しない限りセントヘレナの法律も適用される。島民は約300人で、唯一の集落ラディウス・オブ・ザ・スリーシーズに暮らす。公用語は英語であるが、さまざまな国から来た人々の末裔が外部から隔絶した地理的条件の下で長年社会を構成してきたため、特殊な言語が使用される。現在の島民の家系をたどると、わずか15人の祖先に行き着くと考えられる。祖先となる8人の男性と7人の女性の出身地は主に、スコットランド、イングランド、イタリアである。島には約80家族が住むが、姓は7つしかない。島の北部に小さな漁港がある。空港はなく、島へのアクセスは海路に限られる。島の港には外洋航行船やヨットは着岸することはできず、沖合の投錨地に停泊した船から島の小型船で人や物の積み下ろしを行うことになる。

アルスマグナ王国(夢の世界)

分離する前のマグナ島には中世にアルスマグナ王国という君主制国家が存在した。王国は現在のラディウス・オブ・ザ・スリーシーズを首府として王宮を置いた。島は北部のバックマグナ、東部のオーリマグナ、南部のメリデマグナ、西部のウェスマグナの4つの地方に区分され、各地方にはそれぞれ集落が3つずつ存在した。王国では王が民衆を支配する為に、「モナーク」と呼ばれる石版に法令を刻み発布した。これにより王は恣意的な法令を乱発した為、民衆の間には不満が高まっていた。7代王の時代についに民衆はその圧政に耐え兼ね国外逃亡を始めた。これを危機と見た王宮の有力貴族ジョクラトルは王に評議会の設置を認めさせた。12の村から1名ずつ評議員を選出させ、王に対する要望(リモーナ)を奏上する事を認めたものである。これにより王はリモーナに反して新しい法律を作る事はできなくなった。

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メリデマグナ島(現在の世界)

アルスマグナと海を挟んで5km離れた、周囲30km程度の島。南部のセプト岬周辺を除き、周囲は高さ300m–600m の険しい断崖で囲まれている。セプト岬周辺に約2k㎡ほどの平地があり、開拓者用の「ドミトリ」と呼ばれる宿舎と「グラヌム」と呼ばれる作業場兼倉庫がある。かねてから本島アルスマグナの作業員8名が山を切り開く開拓事業に携わる為にドミトリへ宿泊しながら、昼はグラヌムで作業をしていた。ある時より、アルスマグナの古王国について調査を進める研究者8名が島を訪れて寝泊りをしながらフィールドワークを行う事になった為、作業員たちはドミトリを明け渡し、自分たちは現在グラヌムで生活を送っている。物語は研究者たちが荒天で島から帰れなくなった時点から開始し、そこから数日間の話で展開する。

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用語

モナーク

王が民衆を支配する為に、法令を刻んで発布した石版。材質はマグナ諸島でしか採掘されない鳴轟岩とよばれる石である。国中の至る所に設置されるため、現代においてはその欠片が大量に発掘されている。法は基本的に《主体》+《対象》+《命令(及び禁止)》で構成される。その苛烈な民衆支配の伝承は現代にも伝わっており、信心深い住人の中には既に歴史の一部に過ぎないこの石版に畏怖の念を抱いている者も少なくない。

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評議員

国内にある12の各村において1名ずつ村民の互選によって選出され、平時においては王の代官として村の統治にあたる。また12名による評議会を形成し、王の権力を縛るため、民衆の要望である「リモーナ」を制定する権利を有する。評議員の権力の裏付けは未だ脆弱なものであり、王権をどの程度縛れるかの効力に対しては不明である。廷臣であるジョクラトルによって提唱され、有力な提案を奏上した評議員は執政として国政を司る権利を与えられる事になっていたが、評議会開催寸前の所で王党派によって廃止され、ジョクラトルは亡命する事となる。

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執行官

王の寵愛する廷臣の中から選ばれる役人。別名「王の代理人」と呼ばれ、国内中の至る所に派遣されて、民衆が法に従順であるかをつぶさに監察している。警察権と司法権を有し、自らの恣意的な裁量で民衆を裁く権利を与えられている。執行官の中には身分を隠し市井に紛れ込んで任務を遂行する者や、その反対に、執行官たる証を振りかざし王の権力を笠に着る者などがおり、民衆からは恐れられている。

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レジーナの宿屋

南部(メリデマグナ地方)にある宿屋。リーデ村・セプト村・オーリ村の3村から王府へ向かう街道の合流地点にあり、女将レジーナのふるまう料理が評判である。ここから王府へ向かうにはメルム河、各村に戻るにはクラルス河を渡河しなければならない。メルム河の対岸にも別の宿屋がある為、普段は利用者が少ない。長雨による増水の際は、街道筋から孤立してしまうが、足止めを食った旅人たちで大いに賑わう。ちなみに現代においては、噴火による地形変化の為、メルム河は本島とメリデマグナ島を隔てる海峡となっており、宿屋の遺構は「ドミトリ」と呼ばれる観光客用の宿舎として使われている。

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