【1】
フミコ「アンタらは眠れてるわけ?毎晩毎晩。何か揺れてない?何か、地面の下から、変な音しない?何かその。工事しているような」
スズ「今に始まった事じゃないでしょ。もう慣れちゃった」
フミコ「だけど。ここの所、その振動が強くなってる気がしてるんだ。気になって眠れやしないよ。…え、私だけ?」
バクー「自分の寝息じゃないのか?自分の寝息で寝床が揺れるんだよ」
【2】
タリム「ここに壁がある事の意味を、無くせばいい。もっと気軽に西と東を行き来できればいいんだ」
ゴドウ「どうやってこれを越える?若者の自由な発想が聞きたいね」
タリム「そうやって俺をいつまでも子供扱いするなよ。俺だってこの町の状況を何とかしたいってずっと思ってんだ。壁め!」
ゴドウ「本当にうるせえな」
【3】
コバル「閣下、くまなく調査しましたが、不審な点はありませんでした」
セナイ「我々からの報告は以上です。行くぞ」
フラノ「それでは、私は国境の様子をみてまいります」
ノーベン「貴官たち、着任間もない事から、私を侮ってはいないか?もっと入念に調べろ。というか、まず私に優しくしろ」
セナイ「その結果が以上でございます。失礼」
【4】
セナイ「ここに派遣されて半月になるが、あんな地下室があるなんて気づきもしなかったな。お前も知らなかったというのか」
コバル「申し訳ありません。私も知りませんでした」
セナイ「あそこに囚われていた男が限りなく怪しいという事がわかった」
コバル「彼が所長を殺害したと。私はその結論でも構わないと思いますが」
【5】
ムゴル「ところでゴドウ、その新しい町長なんだが、誰にする」
サマ「え、そういうの、今ここで決めちゃうんですか?町会は?」
ムゴル「ここで一応の、意思統一をしておきたい」
サマ「こういうのって談合っていうか。あまりフェアじゃないような」
【6】
ラン「アナタ最近おかしいわよ。ゴドウさんと付き合ってるみたいじゃない。やめておきなさい。あの人はね、兵士たちにいい感情を持ってない。変な事に巻き込まれやしないかと心配で」
タリム「ただただ兵士達に従って生きろってのか。おかしいのは母さんだろ。娘と引き離されたんだぞ。どうしてもっと抵抗しないんだよ」
【7】
ゴドウ「前町長の雄姿を覚えてる。あの人は壁に挑んで散っていった。いわば英雄だ。兵士と対等に渡り合うのは、アンタしかいない」
セリ「アナタ。兵士に逆らうなんて浅はかよ。穏やかに暮らすべきです」
ニコル「これは、私どもの総意なんです。アナタがふさわしいと思って」
ラン「匂うな。談合の匂いがするな。多数決で決めましょうよ」
【8】
ユカリ「ハッシ、どうしたの、怖い顔して」
ハッシ「前の戦争に駆り出されて、戦死したと思ってたダムスが生きていた。…町の外に来てる。ユカリ、お前の元の旦那が」
ユカリ「…え」
ムゴル「悪い冗談はやめてくれ。妻は、ようやく心の傷が癒えて、私と新しい生活を始める決意をしてくれたんだ。どうして蒸し返す」
【9】
セナイ「何より、君が浮かない顔をしているようだが」
サマ「これで名実共にビスキアが二つに分かれてしまったと思うと」
コバル「珍しく感傷的のようだが。お前にも、故郷に愛着があったのか」
セナイ「町が分かれて辛いのではなく根底にあるのは悔しさではないか。言葉の端に、そんな思いが感じられたが」
サマ「だとしたら、申し訳ありません」
【10】
ニコル「ウルを燃やして光を遮る為の靄を作らないといけないんです」
フミコ「で?まさかこっちのを分けろとか言うんじゃないだろうね」
ラン「いえ、あの。そんなそんなそんなそんな」
セリ「そのまさかだよ当たり前だろ。と、町長が言っております」