【71】 金森「子供は無事なんですか」 佳織「すみません、確認できませんでした」 土屋「中にいるのは何人ですか」 佳織「いち、にい、さん、し、ご、ろく、あ違う。いち、に、さん、私、あ私入れなくてもいいか、ええと」 日野「もういい!ここは彼女たちにお任せしよう」
【72】 水本「確かに俺らが結婚していた事なんて、誰も知らない。身内ですら知らないかもしれない。一瞬で終わった結婚生活だ。話せないだろ」 早希「それって。アナタに問題があったんじゃなくて?たいてい、そういうのって、暴力が原因だったりするけど」 智絵「こういう手段使う男だから。充分ありえるじゃない」
【73】 智絵「面倒なだけでしょ。預ける所を探して、送りに行って迎えに行って」 金森「誰も助けてくれない。こっちだって生活の為に働かなきゃいけない」 智絵「それがあの子に何だって言うの。置き去りにする理由にはならない」 金森「…返してよ」 智絵「返せません。あの子がそう言ったの。帰りたくないって」
【74】 水本「…金森さん?何しに来たんです」 金森「…そっちこそ何してんの、ここで」 智絵「ほら。早く説得して」 金森「すみません、誰に何を説得」 智絵「アナタの旦那だった男なんでしょ?」 金森「…そういう事になってるの?…さとみに会わせろってのは」 水本「三輪聖美ですが。連れてきてください」
【75】 三輪「…お前、水本って男に心当たりはあるか?」 聖美「知ってるの?彼を」 三輪「…思い出したんだ。お前の知り合いじゃないのか。…私が倒れる前、やはり聖美を探して、訪れた男がいた」 聖美「そもそも、アナタ、誰なんですか」 三輪「私は本当にお前の居場所を知らなくて、すげなく追い返した。そこで、彼は名乗ったんだ。聖美の夫だと」
【76】 佳織「信じてもらえるかどうかわかりませんが。こちらアナタのお爺さん、みたいなんです」 聖美「…お爺ちゃん?」 三輪「…いや違う。遺影とは似ても似つかない。今、幾つだと思ってる。爺さんなんて年じゃない。というか自分でも幾つかよくわからない」 聖美「何言ってるの」 三輪「生まれ直してきたからには、お前を傷つけて、後悔したくないよ」
【77】 日野「…どうだった」 金森「何でもなかった。人違いだった」 日野「何だよそれ!あれだけ深刻な雰囲気醸し出してさ!そりゃないぜ。土屋さん、どうだ。アンタと私で、いっその事、強行突入するか」 土屋「相手が何人かはっきりしてませんよ」
【78】 日野「警察として、何か手立があるのか」 聖美「私と話をしたいという事ですので、これから行ってみます。ですが、私、警察じゃないですよ」 木内「そうよ。保険屋よ」 日野「保険屋が何しに行くんだよ。引っ込んでろよ」
【79】 木内「保険屋の突破力なめんじゃないわよ!私らね、パンフレットと設計計算書があれば、どこだって突入できるのよ。ね?ほら。これ持っていきなさい。私が今勧めてる、新しい損害保険の商品「ツボライフ21」。万が一、壺が割れても、全額保証対象になるの」 日野「お前専用の保険だそれ!」 聖美「あの。私、保険屋じゃないですよ」 木内「は?」
【80】 金森「どういう事?三輪さんのお孫さんが、2人」 佳織「はい。ええ。いや、ええ、いや。私、だけのはずですけどね」 木内「怪しいな。…詐欺師かも。アナタに成りすまそうとしてるの」 佳織「ああはぁ、申し訳ないです。すいません、上手に呼吸ができなくて」
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撮影者:佐藤淳一 ※この画像の著作権は団体並びに撮影者に帰属します。