【91】
セナイ「これも全て所長の思惑か?」
タダキ「あの男は、話の分かる奴だった。お前らの様に、頭からALを恐れず、寧ろ、その自我を解放する手助けをしてくれた」
ナトリ「その結果がこれですか」
【92】
シム「コバル。助けてくれ」
ナトリ「この男を信じてはダメ。アナタを身代わりにしようとしている」
フラノ「コバルくん、私の残っている有給を全部あげるから代わってくれ」
コバル「有給、どれくらい残ってるんですか」
ナトリ「この男は自分の事しか考えてないから聞いてはダメ」
【93】
タダキ「こいつらの身の自由を奪う事は、意味のない事ではない。いつかここに人間どもをぶちこんでやる。この30年間、願い続けた」
アイン「アナタは間違っていると思う」
タダキ「お前には、生きていく上での尊厳がないのか」
アイン「かつて、たった一人の男の尊厳が、私の住む町を狂わせた。同じ過ちを繰り返すのを、見ていられない」
【94】
シム「結局、お前も裏切られたって事か」
タダキ「別に、その気になればあのウルを取り上げる事だってできた」
シム「身体ガチガチだったじゃねぇか!出来損ないが」
タダキ「アイツの家族や仲間を、俺が殺してしまったも同然だからな」
【95】
コバル「代理、何を?」
フラノ「何かの間違いで腕が伸びないか試している」
【96】
シム「…何も起きないな。…時間の無駄だった。…お…驚かせやがって!や、やっぱりハッタリだったのか!」
ナトリ「でも、その嘘には何の意味がある?きっと、ALにとって不都合な事が起るに違いないです」
タダキ「お嬢さん、察しがいいな」
【97】
タダキ「俺だけじゃない。当時はそんな奴がたくさんいたんだ。そいつら皆、今は町の中にいる」
ナトリ「…どこに?」
タダキ「お前ら、いつも見ている。見ようとしてないんだ」
ナトリ「……あの壁が」
タダキ「その慣れの果てだ」
【98】
ナトリ「生かしておいては、いずれまた禍根を残すでしょう」
シム「残しておいたらいいんだよ。俺らもALも馬鹿なんだ。どっちか一方が勝った気になれば、それはそれでまた不幸を呼ぶ」
ナトリ「人の形をし、人格を持たせ、感情を持たせ。それは全て間違いだったのでしょうか」
シム「当たり前だろ。大間違いだよ。思い上がるのが大間違いだ」
【99】
ゴドウ「これはこれは。セナイ副長」
セナイ「…貴様」
ゴドウ「血眼になって私を探していたんじゃないですか?」
【100】
ゴドウ「何かを手にすると、無性に突き立てたくなるというか、差し込みたくなると言うか」
セナイ「やめろ!」
ゴドウ「そう、こうやって。…幼稚ですが。これが私のできる精一杯の抵抗なんですよ」