【41】
ラン「やっぱり私には町長なんて無理です。町長として息子を突きだすよりも親としてあの子たちに何がしてやれるのか、考えなきゃならないんです。もし、息子が捕まってしまうなら、なおさら、マイを連れ戻してほしいんです。お願いです」
ノーベン「よし代われ。心配せずとも、壁の向こうから娘を連れてきてやる」
【42】
フラノ「あのー。奥さん」
ラン「そういうわけですので、たった今、無事に娘が戻って参りましたので、私、この辺で失礼させて頂きます。色々な思いがあふれて、上手く言葉にできないので!」
ノーベン「おいおいおい、勝手だなー、さっきの約束は」
【43】
マイ「ねえ、兄さんは?」
ラン「…タリム?……そうね、その事は話さなきゃならないわね」
バクー「ああ、その事なんだがな」
ラン「…タリムは今、当局に追われる身、犯罪者なの。穴を掘って、西へ抜けようとした」
【44】
ダムス「でもおかしいよな。その割には、堂々とプラザを横切って西側にきたのに。穴掘った意味ないな」
ラン「あ、よかった。私だけに見えてたわけじゃないのね」
ダムス「いるよ。俺だよ。ダムスだよ」
【45】
ゴドウ「この町を支配してるのは軍でも行政官でもない。皆が微かに恐れている、ウルというものの存在だよ」
サマ「アナタは支配者にでもなるつもりなの?たかがこんな町一つの。
ゴドウ「そんなの俺の柄じゃない。密かに、町の奴らの行動をコントロールしたいだけだ」
サマ「何様のつもりよ。ウルを失いたくない人々の不安を煽るだけ煽って。支配者じゃないなら、宗教だわ」
【46】
バクー「先程から気になっていたが。こちらの方々は?」
フラノ「東ビスキアのノーベン行政官だ。失礼の無いように」
バクー「おお、これはこれは。無礼をいたしました。私、西側で顔役をしております。バクーと申しまして。こちらはマイ。彼女の娘で」
【47】
ノーベン「よし。…ずっと温めていた策がある。見てろ。…痛い。あたた。急に腹が…ああ、苦しい。だ、誰か…」
フラノ「閣下。もはや『お大事に』の他に、かける言葉が見当たりません」
マイ「行政官が、急に苦しみ始めたけど」
【48】
ノーベン「私は動物園に行くのが趣味でね」
マイ「え、急に趣味の話をしだした」
ノーベン「我々人間は檻の中の動物を見ている。いや見ているつもりでいる」
マイ「何か、この人、怖い」
ノーベン「はははは!引っかかったな!西側のバカども!この程度の策にひっかかる知性の低い動物は、檻の外から眺めるに限る」
【49】
バクー「お前はさ、町に縛られ過ぎてるんだな」
マイ「父さんが命を賭けて守ろうとした場所だからよね」
ラン「離れてしまったアナタより、町の皆が平穏に暮らせている事を優先してしまった。何もしてやれなかった母さんを許して」
【50】
マイ「う、うん。でも、本当に、大丈夫、かな。あのカウントがなくなったら、大変な事が起きるんじゃないの?」
バクー「大変な事って?」
マイ「…爆発する、とか?」
バクー「んな馬鹿な事あるわけないだろう」