【11】
シム「違う、私たちは…EREの」
ミド「でも兵隊さんなんですよね。同じ事じゃないでしょうか。向こうの国に、私の様な境遇の子供をつくってるってことですよね」
【12】
タリム「抜けたぞ!やったな!思いの外、近いルートがあったって事か」
ジロー「昔の水路がこの辺りを通ってるって、ゴドウさんが言ってた」
ナトリ「…何なのコイツら」
【13】
タダキ「……お前たち、壁が憎いのか」
ジロー「あれを憎んでない奴なんかいない」
タダキ「壁を取り除きたくないか」
ジロー「…そんな事が可能なのか?」
タダキ「ああ。俺をここの床の上から出すことができれば」
【14】
ナトリ「…え。増えた。…嘘でしょ」
タリム「何か、マズかったか。悪い」
シム「待てって!」
タリム「何だよ。来るなって言ったり、行くなって言ったり」
【15】
タダキ「一つ言えるのは、この牢の仕組みは、俺が作ったって事だ」
ジロー「おい、タリム」
タダキ「無暗に乗るな。奴らが逃げ出す機会を与えてしまう。それに。その時は、お前がここに残る羽目になるんだぞ」
【16】
シム「下手にいじって、取り返しのつかない事になるのは御免だぞ」
タリム「大丈夫、アイツ、ああ見えてエンジニアなんだ」
ナトリ「成程、頼りになるかもしれない」
ジロー「やめろよ。俺は井戸を掘る技師だ。こういうのは専門外だ」
シム「ちょっと待て、じゃあお前、ど素人だな!」
【17】
ゴドウ「相手は死んだと思われてた人間だ。コイツらの結婚も正式な手続きがあっての事だ。ダムスは気の毒だが、仕方がない」
サマ「微妙よね。この町で暮らすんでしょ。どういう顔して?ユカリさんだって、顔を合わせる事もあるでしょうね」
ムゴル「唯一の幸いは、アイツが国境の向こう側に現れた事だ。町のこっち側には入ってこれない」
【18】
タリム「勝手に入るなって言っておいただろ!」
ラン「こうでもしなきゃ、アナタはいつだって私の声に耳を傾けてくれないじゃないの。私がどういう気持ちでここまできたかわかる?」
シム「何者だ」
タリム「あ。俺の母さんだ」
ナトリ「ちょっとよくわからない。家族?家族がここへきているの?」
【19】
ラン「もし、この向こうが西側だとして、息子が壁を壊そうとしているのを見過ごすわけにはいかないの。母さんね、新しい町長になったのよ。町長がそれを許したら、村長に格下げされるの」
シム「そういうシステムじゃないと思うが」
タリム「だから。マイを見捨てるつもりか」
ラン「…仕方がないじゃない」
サマ「何か、壁の向こうから音がしない?」
【20】
サマ「そもそも、あの壁はなんなの。いつからあるの。こんな田舎町を二つに分けて何の意味があるの。あ、ごめんなさい。私、元々はよそ者だから、町の歴史にも疎くて」
ゴドウ「あの壁はある日突然できた」
ムゴル「いや。できたというより、現れた」