【1】
ハッシ「おかしな話だな。元々は一つの街だったのに。今は違う。昔は分け合っていたものも、それぞれの財産で。簡単に取引できない」
マイ「国境で、そんな話、やめてください」
【2】
マイ「ねえ。最近、変わりない?母さんも兄さんもここへも顔を見せにきてくれない。どうかしたの」
ジロー「まあ。二人とも色々と忙しいらしくて」
マイ「何かあったんじゃないかって、気掛りで」
ジロー「心配するな。その内、驚くような事が起きるかもしれないよ」
マイ「驚くような事?例えば壁がなくなったり?ま、ありえないわよね」
【3】
ビスコ「早速ですが。昨日から西側の兵士の姿を見かけません。国境という割には、いささか緊張感に欠けます」
レイジ「平穏で結構な事じゃないですか」
ビスコ「こちらがその気になれば、簡単に攻め込む事ができます」
レイジ「しかし攻め込んだ後は?また戦争が起きる。戦争がお好きですか」
【4】
セリ「私がお願いしたんです。その者から手を放してください」
レイジ「彼女に従ってください。西側で代々続く資産家の当主です。我々、駐屯兵もあの家の援助に依存している部分が大きくてですね、だから」
ビスコ「我が隊は、あの一市民に金で飼われているとでも?」
レイジ「それは余りにも、身も蓋もない言い方だ」
【5】
セリ「あちらも限りある資源ですから。快く与えてはくれないでしょう」
ジロー「でもね、セリさん。背に腹は変えられませんよ。もしアレなら、俺が行ってきましょうか」
ビスコ「…西側の領域に立ち入るという事ですか」
レイジ「…おいおい。いくら俺でも、立場上許すはずないだろう」
【6】
ジロー「本当に、プラザを通らないと、向こうには行けないんでしょうか」
セリ「…アナタ、何を考えているの?」
ビスコ「現に。私達の身には何も起こっていない。おおかた、地元の人間のみが信じる迷信の類でしょう」
【7】
ビスコ「定時の交代にはまだ少し時間がありますが。フラノ隊長」
フラノ「副隊長代理だ」
ビスコ「その肩書きが、異様にまどろっこしいのですが」
フラノ「だろうな。悪い気はしないからもう隊長でいいだろう」
【8】
マイ「ダムスさん?……前の戦争で死んだって聞いていたから」
ダムス「かろうじて一命取り留めて戻ってこれた!ユカリは達者か」
【9】
マイ「アナタの家は、町の東側でしたよね。あの戦争の後、町の中央に壁が建てられたんです。USQがここまで進駐してきて、町は東西に分断された。一つの町でも、二つの国が分割している。そしてここが、その国境なんです」
ダムス「まあいいや、詳しい話はあとでゆっくり聞くよ」
【10】
フラノ「いやいやいやいやいやいや」
ダムス「何だよ。何だよ」
ビスコ「今の話聞こえなかったの?」
マイ「あの戦争の後、町の中央に壁が建てられたんです。USQが」
ビスコ「ほら、あの娘、もう一度同じ感じで説明始めちゃったわ」
ダムス「話は分かった。だが別に国境をないがしろにしてるわけじゃない。ただ、そっち側にある我が家に帰りたいだけなんだ」