【31】
シム「セナイ主任には幻滅した」
ナトリ「ああでもしないと、我々の身柄が危なかったし、もっと大きな秘密にも触れられずに済んだ。主任なりのお考えだと思います」
バクー「西側の顔役、バクーと申します。無事、捕虜収容所から逃げ出したとお聞きしました。お二人を歓迎いたします。さ、こちらへ」
【32】
ハッシ「もう放っておいたらどうだ。あの男の事は忘れよう。関わると、厄介な事になる。その…ALだとしたら」
ニコル「でも、何かを伝えようとしていたでしょ。この町に何かが起ころうとしているって」
ハッシ「何も起きない。今、ウルも燃やした、やがて靄が生まれる。そしたらいつも通りの暮らしができる」
ニコル「そのいつも通りの生き方ってのが、よくわからないの」
【33】
ハッシ「お前が向うの妹を気にかけてるのは痛いほどわかる。だが、横切るのはやめておけ。どうなっても知らないぞ」
ニコル「さっきも、兵士たちが倒れたって聞いたわ」
タリム「もし、俺に何かあったら、母さんの老後の介護、頼みます」
ハッシ「あ、ああ。……え、あ。い、嫌だよ。何をシレっととんでもない事頼んでんだ」
【34】
タリム「…やったよ、気が抜ける程あっさりと西に行けちゃったよ」
ハッシ「え、え、何で戻ってきた!?折角向うに抜けたのに」
タリム「あ。やべぇ。あ。でも、何事もないんじゃ、いつでも自由に行き来できるわけだから」
ニコル「…じゃあやっぱり、私たちが信じてきたものって何だったの」
【35】
ニコル「…アナタ?え?凄い形相だけど」
ハッシ「…足が、思うように…動かない」
タリム「冗談でしょ?」
ハッシ「…お…前、…騙…し…た…な」
タリム「いやいや、何で?何で動きが鈍くなるの?」
【36】
セリ「彼は、どうやってあそこに」
ニコル「プラザを越えていったんです」
セリ「恐ろしい事。タリム、すぐに戻っていらっしゃい」
タリム「戻ります。妹を連れて」
ムゴル「一度越えた者が、簡単に戻って来れるわけがない」
【37】
タリム「こんなのは本来の形じゃないだろ。東も西もないだろ」
セリ「だとしても、今がそうである以上、受け入れなさい」
タリム「ユカリさん、ダムスさんが生きてたんだろ?なのに離ればなれに暮らすのか?それが本来の形か?」
ムゴル「はい、妻の事に触れるのはやめてください」
ユカリ「違うと思う。でも、変えようがないでしょ!」
ムゴル「ほら、違うって言っちゃったじゃんか、どうしてくれるんだ!」
【38】
ムゴル「…どういう遊びだね、これは」
ニコル「ムゴルを避けているの?」
セリ「避けているのね、ムゴルを」
ユカリ「これは、身体が勝手に」
ムゴル「勝手にどうした」
【39】
ユカリ「全く正常です。健康優良児です。むしろ、身体の奥底から湧き上ってくる咄嗟の衝動のような気がして」
ハッシ「自分の意思じゃないのか」
ユカリ「本能的に?」
ムゴル「…だとしたら、却ってショックだ」
ニコル「ムゴルを避けているの?本能が」
セリ「本能が避けているのね、ムゴルを」
【40】
セリ「私は、東ビスキアの生活を乱す者を許しません」
ニコル「…アナタは、王様でもなんでもないはずよ」
セリ「何?」
ハッシ「いえ、何でもありません!」