【11】
在原「この度は、何と申し上げてよいか」
光孝「どうも、ご無沙汰しております。息子さんは大きくなられましたか」
在原「今年で小学三年生に。大旦那さまにも、可愛がっていただきましたね」
祐子「…あの方どなたです？」
【12】
和泉「この場にもう一人、お招きするように指示されておりました。その方は小倉陽成さんと仰います、亡き義孝氏の非嫡出子です」
光孝「ひちゃくすつ、だと？」
紫「ひちゃくす！ひちゃ！」
和泉「言えないなら無理して言わなくてよろしい！」
【13】
小倉「私は、会社やこの家の財産には興味はありません。相続は放棄します」
和泉「ご兄弟には法定相続分がございます」
小倉「いえ。それも結構です。無闇に事を荒立てるのは好みません」
【14】
祐子「見てみなさいよ。あれ２人並んでたら、親子に見えないでしょ。どっちかに確実に魔法かかっちゃってるわよ。恐ろしい魔女の親子よ」
清原「…奥さま、あちらの方はご主人ではなく、亡き大旦那様の」
【15】
伊勢「会長室から最近、妙な臭いがしていたもので。原因を調べた所、引き出しの中から、ビニールに入った異様に臭い油の塊みたいなものが」
紫「これ何の話よ。捨ててよそんなもの」
【16】
小倉「これは架空の風景ですから。広がっていて欲しい景色というか」
在原「何か謎めいてるわね。そういえば、生前、お父様がよく口にしてましたよ。『自分の本当の財産がこの絵の中に込められている』って」
【17】
祐子「私も体面がありますからね、たかが愛人やら隠し子でこんな場で大げさに騒ぎたくないですけど。ですけど…主人は許せないわ」
【18】
和泉「『ただし、この場にいる９名の多数決にて承認を得るものとする』光孝氏の相続に賛成か反対かを、この９人の投票で決めよとの事です」
【19】
光孝「…ふざけるな。……おい、お前達、よからぬ事を考えるなよ」
紫「…別に。考えてないわよ」
光孝「明らかに悪い顔になってる！」
【20】
和泉「箱の中に手を入れて頂くと、中で左右に分かれております。賛成は右。反対は左に票を投じてください。決まっている方から随時どうぞ」
