【21】
スコット「打ち切りでいいと。そういう結論だな?」
ビッキー「さっき、サイモンはそう報告すると言っていたわ。そうよね?」
グレース「そんな発言…したかしらね」
ビッキー「ちゃんと書き留めてるわよね?記録を捨てたりしてない?」
サイモン「彼女には理由がない」
【22】
アリス「暗号を解読したのは機械的な作業に過ぎないのよ」
ドーラ「中にドイツ語が堪能な人が入っているんじゃないの?」
サイモン「頭が痛いな」
スコット「あれは与えられた文字列を、決まった法則で変換するだけの機械」
ドーラ「ごめんなさい。科学とか技術とかには疎くて」
スコット「そういう次元の問題じゃないと思うがね」
【23】
グレース「でも。機械を人間と錯覚する事だってあるんじゃない?」
アリス「ない」
グレース「『中国房』よ」
アリス「中国語?何ていったの?私も専門外の事には疎くて」
グレース「『中国語の部屋』」
【24】
アリス「つまり、ミネルバに会話のパターンを、覚えこませれば。こちらが提示した言葉を、一定の法則にしたがってただ、答を返す」
グレース「ええ。あたかも、それが人間であるかのように錯覚する。それが『中国房』よ」
アリス「面白い」
【25】
アリス「ちょうどいい。博士、ミネルバを、改良したいのですが」
ソール「あれは私の作品だ。お前が改良とはおこがましい」
アリス「いえ。私たちが取り組みたいのは、暗号機としてではありません。いわば、ミネルバに知性をあたえる作業なのです」
ソール「知性?知性の定義とは?」
【26】
グレース「もちろん、多くの会話を覚えこませる必要があると思いますが」
アリス「初めから完璧など求めない。簡単なやり取りから始めるの」
グレース「設問をすべてイエス・ノーで応えられる単純なものにするとか?」
ソール「今、私がそれを言おうとしたんだ」
サイモン「そうだな。そして回数をあらかじめ決めておこう」
ソール「それも今、私が言おうとした!」
【27】
セス「ロドニーを失脚させる気か?」
スコット「こういう言葉がある。『チェスとは何もよりもまず、闘争である』」
シド「まあ、今は、チェス全く関係ないけども」
【28】
シド「いわば、人工的な知能って事か」
ソール「解読機としてはチューリングのコロッサスに溝をあけられたが、新たなる人工知能の分野で、私は世に出る。ミネルバとともに」
スパイク「やっぱり、チューリングへの嫉妬というか。そもそもミネルバは」
モニカ「黙って。…どうすんの。すぐにはできないわよ。部品がない」
シド「探すしかないだろ。見てみろよ。顔のツヤツヤ感が半端ないぞ」
【29】
スパイク「そういえば、ドイツから押収したエニグマ暗号機はどうなった」
モニカ「軍が押収したんでしょ。………え?……あ、何でもない」
スパイク「一台欲しいな。会社で商品化するんだ。手紙とかをさ暗号にして」
シーラ「それ、受け取った相手が読めないじゃないのさ」
【30】
スパイク「密かに、探ってみてよ」
シーラ「私がかい?それって、スパイ?いや、無理だね。私には、そんな密かにとか無理だ。向いてない。全部洗いざらい喋っちゃうんだ」
スパイク「それは失格だね」
シーラ「よかったよ。ただのハウスキーパーで」